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2018年、読んでおきたいおすすめ小説9選!

新春の2018年に入って読んでおきたいおすすめ小説を9選まとめてみました!
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単なるメディアミクス小説ではない!西尾維新氏の「物語シリーズ」

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西尾維新氏といえば、かきあげる小説が多作でありしかも多くの作品がメディアミクス展開することで有名です。おそらく今が少なくなってきた「作家買い」される作家のひとりではないかと私は思います。

その代表作が「化物語」に始まる「物語シリーズ」です。この小説のすごいところは、今年2018年から少年マガジンで漫画連載が開始され、2018年には新作のアニメが放映されるなど、メディアミクス作品として大成功しているという点ではないのです。むしろ、こういったメディアミクスに抵抗するかのような小説の内容がすごいのです。

作者の西尾維新氏は明らかにアニメ化作品をライバル視して原作で対抗意識を燃やしているように私には思えて仕方ないのです。つまり、非常に映像化が困難な小説であり、内面描写が深層に及び、すさまじく深い、読む者によってさまざまな解釈が可能なテーマ性を持った作品であるということがいえると思います。

まず、基本は物語の語り手が一人おり、その語り手による一人称の語りで話が展開していきます。語り部は主人公の阿良々木暦であることがほとんどですが、他のキャラクターである場合もあります。チョイ役のサブキャラだと思っていたキャラが語り部になることもあります。このような形をとっているため、延々と深い思考や思いが長々と書き連なる物語のシーンが多いのです。

画面は全く動かず延々と内面描写だけが続くような小説ですので、映像化するときには本当に困ったのではないかと思います。ただアニメの方もスタッフ、声優の驚異的な頑張りで成功した作品となっています。そして、それを見てまた西尾維新氏が対抗心を燃やすという形になっているのではないかと思うのです。

ところどころにメタなセリフが出てくるのは、その感情の表れではないかと私は思うのです。物語の方は最強の吸血鬼とつながり、自身も半分吸血鬼に近い存在になってしまった高校生、阿良々木 暦を中心とした「怪異」と評される人ならざる存在が起こす問題を描いたものです。キャラクターの造形は現実の写実ではなく「アニメ」「漫画」の写実によって造形されたと思われる点から、一種のライトノベル的な要素はみられます。

しかし、それは嘘くさいキャラということでなく、この世界の中では本当に息づいて生きているのです。この魅力的なキャラ造形と深い物語の展開が最高に楽しいエンタメ小説を創り上げています。今の時代の中で最高に面白い小説の中のひとつであると私は思います。
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格闘技小説の最高峰!夢枕獏氏の「餓狼伝」

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私は自分でも小説を書いています。その中で小説ではアクションなどは書くべきではないという極端な意見を聞いたことがあります。理由はどのような描写をしてもアクションなど目に訴えるものは映像作品に勝てないからだといいます。

しかし、私は大きく反論したいです。その方は夢枕獏氏の「餓狼伝」を読んだことが無いののではないかと思うのです。格闘技描写において明らかに映像作品を超えます。餓狼伝は「映画化」「漫画化」もされています。漫画化は板垣恵介氏と谷口ジロー氏という超実力派の漫画家が描いていますが、原作を超えたと言い切れません。

別の面白さはありますが。少なくとも格闘技描写のすさまじさは、文章で書かれた創作作品とは思えないレベルにあるということです。小説は創作者と読者の共同作業で物語が生まれます。そのジャンルが好きな読者にとっては、作者の世界を共有し自分だけの世界を脳内に創ることができるのです。これは小説のおおきなメリットであり、映像作品を超える部分だと私は思っています。

餓狼伝もその種の作品であり、格闘技が好きなファンにとっては、自分だけの餓狼世界を脳内に創ってしまうのです。いいえ、創らされてしまうというような感覚です。漫画家の板垣恵介氏はボロボロになるまでなんども読み返すほど、原作のファンでありそれが高じて漫画化の話を自分で持ち込んだというコメントをしています。

あの漫画は板垣恵介氏の脳内で生まれた世界なのでしょう。単に人が素手で戦い、どっちが強いかということを延々と書き続けることは至難の技です。現在も真・餓狼伝として話は継続中ですが、20年以上にわたり連載を続けているのは物語の中で、本当にキャラクターが生きているということもあるます。

そこに世界があり人がある。この世界と同じように小説の中にも世界がある。口で言うのは簡単ですが、この世界の構築は創作において最も困難なもののひとつだと私は思います。そのような魅力的なキャラが戦い、そして結果がどうなるかわからない。

主人公が勝つという予定調和的な物語ではないのです。そもそも主人公丹波文七の敗北から物語は始まっているのです。そして、少年漫画にありがちな強さのインフレーションもおきません。なぜなら、松尾象山という最高峰が最初から示されおかれているからです。このように、戦いをテーマとする小説の弱点をカバーする工夫もされています。格闘技が好きな方なら絶対に嵌る小説だと私は思います。

辛い時代に演劇を・・短く、そして永遠にも似た濃密な三日間を過ごした人々の物語『紙屋町さくらホテル』

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誰もが国のために死ぬことが当たり前だった昭和20年、広島市紙屋町のひなびた宿、「紙屋町さくらホテル」に集まった9人の物語です。

井上ひさしの作品の特徴ですが、いわゆる特定の主人公がいません。王子や姫という特別な地位にあるわけでもない、ごく普通の人々だからこそ、この作品は生きているとも言えるでしょう。とはいえ、この作品の舞台はあくまで紙屋町さくらホテルと、すべてが終わった後の東京巣鴨プリズンの2場面のみ。

怒号や爆風の飛び交う戦場のシーンはひとつもありません。それなのに、確実に戦争の狂気に蝕まれた世界はここにあるのです。日系二世の淳子はアメリカ人にも日本人にもなれない苦悩があり、その従妹である正子は新婚まもない夫を戦争で亡くし、大島教授は戦地に赴く教え子を次々と見送り、実在の名俳優である丸山定夫と園井恵子は演技の場に様々な制約を強いられ・・そして、体制側であるはずの特高刑事戸倉や海軍大将長谷川、長谷川を監視する針生でさえ戦争の被害者でもあります。

そんな彼等がひょんなことから舞台で演劇をすることになり、なれない台詞や演技に四苦八苦しながらもやがて演じる楽しさに目覚めていくプロセスを、作者は時に優しく、時にユーモラスに描写しています。特に元タカラジェンヌである園井の熱血演技指導、戸倉の演技へのはまりっぷりなど、笑うツボが満載です。

しかし、登場人物たちの台詞にはひとつも甘さの欠片もなく、徹底したリアリズムがあり、それが読者の心を鋭くえぐるのです。後半に亡き教え子の本当の心の内幕をつづった手紙を読む大島教授の独白にそれがこめられており、読者に鋭く問いかけてきます。

この物語はたったの三日間というつかの間の時間であり、登場人物達は濃密かつ永遠にも似た時を過ごしました。そしてその後は・・作者の井上ひさしは徹底した戦争反対主義者であったといいます。

しかし、この作品はただ安っぽく「戦争反対!」と叫ぶだけでなく、戦争を推進した人々の言い分もきちんと丹念に書いており、それが他の作品と一線をかくしていると言えるでしょう。自由に生き方も決められず、夢見ることさえ許されなかった時代に、架空の物語を演じることで本当の自分を見いだす人々の心情、更に戦争の虚しさを問うこの作品は、本当に今の若い方達に読んで頂きたい名作です。

…『これは経費で落ちません!〜経理部の森若さん〜』(青木祐子・著、集英社オレンジ文庫)は、面白いビジネス系小説

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ライトノベル系の作品で、青木祐子さんという方が執筆された『これは経費で落ちません!〜経理部の森若さん〜』という本が在ります。これは、石鹸や入浴剤を開発してそして販売する会社内で、経費に関する誤魔化しを見逃さないという27歳の森若沙名子という経理OLの物語です。本書は四話で構成されており、1話目は営業部で1歳下の後輩が、珍事に遭うという話となっています。

営業部のエースとされる沙名子の後輩は、お調子者で明るい感じの黄色が似合うような人物です。この人物には「彼女」がおり、それは同じ営業部のキリカという女性です。この、キリカは沙名子の後輩に当たる佐々木真夕と同期入社であり、営業部エースの山田君に対して恋愛感情を抱いているそうです。キリカは、山田君が「誰かと付き合っているのでは」と疑っており、その事を沙名子に相談をして悩みを打ち明けたといいます。

一方の山田君ですが、お調子者で沙名子に対して甘えているという印象が感じられます。経費として落とすように終業時間ギリギリで経理室に駆け込むことがあり、これはキリカとしては、「山田君の奴、もしかしたら、沙名子さんと付き合うつもりでは」と感じてもおかしくないでしょう。

ある日、沙名子はとある温泉施設で、キリカと山田君が言い争っているのを目撃してしまいます。「あんな人と一緒だったなんて!」と立腹するキリカ。「誤解だよ!」と感情むき出しになって釈明する山田君。沙名子は、山田君が経費として落としてほしいと依頼したのは、「実は、キリカと休日にデートをした代金」だったとみなして、「会社に報告します」と冷徹に山田君に宣告。

この小説を読んで思わず笑ったのが、山田君とキリカ、それに沙名子が温泉施設で鉢合わせになったという場面です。何度読んでも思わず笑ってしまい、初めてこのページを黙読した時は、笑いが止まりませんでした。山田君が温泉施設にいたのは、沙名子の会社の取引先とされるビジネスパーソンと「一緒になって、この温泉施設を視察するため」であり、それが判った時には、更に笑ってしまいました。

なぜ笑ったかというと、「誤解なんです、森若さん」と山田君が慌てて釈明し、その光景をキリカが「山田君って、森若さんが好きだったなんて!年上が好きなのね」と言ったことであり、これは笑えるライトノベルであり、経理に関する人間模様を面白く知ることができました。

因みに2話も、誤魔化しを許さない沙名子にとって、変な人間ドラマを物語った回になっています。2話では、受付嬢の派遣社員が、ふてぶてしい態度を取っていたものの、最終的には感情むき出しになって森若さんに謝罪をするという話ですが、誤魔化しは通用しないものというのが、実感できたようです。

私が最近読んだ小説の中でも特に印象に残っている1冊は、きみの鳥はうたえる、になります。

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小説「きみの鳥はうたえる」は、佐藤泰志によって1982年に刊行された初期を代表する青春文学になっております。1986年度の芥川賞候補となった表題作のほかにも、傑作短編小説である「草の響き」も収録されていました。

ビートルズのナンバーからとったタイトルと、3人の男女が織り成していく関係性には奇妙な繋がりがありました。ジャズ喫茶やミニシアターが駅前に立ち並んでいる、レトロなムードを感じることができる街並みが映し出されていきます。

この町に対して深い愛情と僅かな憎しみの感情を持っている、ふたりの男性とひとりの女性が登場していきます。本屋でのアルバイトをルーティンワークのごとくこなしながら、何事にも興味がない21歳の青年の気だるい雰囲気を感じました。

無職の親友である静雄との怠惰な共同生活と、同僚の女性である佐和子との間で繰り広げられる恋愛模様が印象深かったです。佐和子と肉体的には繋がりを持ちながらも、その心までは理解できない主人公の葛藤が心に残りました。

時にやり場のない怒りを爆発させていき、時には無気力状態へと陥ってしまう様子を淡々としたタッチで描き出していました。知的なイメージが漂う中でも、突如として暴力的な言動や振る舞いを見せる二面性がありました。静雄の故郷である海辺の街へ、佐和子が夏のバカンスに出かけるあたりから不吉な予感が高まっていきます。

「この夏がいつまでも続くような気がした。」というセリフには忘れがたいものがありました。短くも鮮烈な季節の記憶と、二度と戻ることのない貴重な時を生きる若者たちが重なり合っていきます。精神的にも肉体的にも傷ついて療養中の静雄の母親の存在が、悲劇の引き金になっていくストーリー展開には胸が痛みました。

静かなオープニングから破滅的なクライマックスシーンまで、センセーショナルに陥ることなく一貫して静かな語り口が感動的でした。静雄の母親が長らく入院していた世界の果てに佇むような病院の風景が味わい深かったです。

世間から忘れ去られた建物からは、20年以上前に自らの生命をたった孤高の小説家の生きざまが思い浮かんできました。生前は5回芥川賞に落選して受け入れられることのなかった作品が、時を越えて多くの人に求められていることが伝わってきました。2018年には三宅唱監督によって映像化される予定なので、映画に興味のある方にはお勧めの本です。

私が最近読んだ小説の中でも特に印象に残っている1冊は、非望、になります。

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小説「非望」は、もてない男の悲哀を描き出している小谷野敦によって2007年に刊行された恋愛文学になっております。評論家や文芸研究者としても活躍を続けている著者の小説デビュー作品になり、表題作のほかにも「なんとなく、リベラル」という短編小説が収録されていました。

自らの過去の経験を投影させたかのような主人公の藤井の、愚直で不器用な生きざまが映し出されていきます。あるべき自分の理想像と現実とのギャップに苦しんでいる若者には、著者の代表作でもある「童貞放浪記」を思い浮かべてしまいました。

小説家に漠然とした憧れを抱えていながらも、小説の題材になるようなドラマチックな出来事が起こらないところが皮肉な味わいです。大学院で出会い一目惚れをしてしまった女子大学生の篂響子への、一途な思いが伝わってきました。主人公であれ想いを寄せている女性であれ、ふたりとも孤独を抱えながら生きている様子が印象深かったです。

大学という無機質で巨大な組織のなかに、ひとりの人間が飲み込まれていき匿名性の高い存在になってしまうことを考えさせられました。「ストーカー」や「セクハラ」といったキーワードが社会的な問題になるまえの、1980年代独特な恋愛への価値観や考え方が懐かしいです。何度も拒絶されながら挑み続けていく自らを、ドストエフスキーの「罪と罰」に登場するスヴィドリガイロフに重ね合わせていきます。

「何者かの見えない手に操られたように、私はここまで来てしまった」、というセリフが心に残りました。好意を抱いている相手を追いかけていき、留学先であるカナダの寄宿舎にたどり着いた主人公が呟く言葉です。

一歩間違えればトラブルや犯罪にまで繋がり兼ねない危険性がありながらも、その行動には一貫して揺るぎないものがありました。異国情緒溢れる街並みを舞台に、冴えない男女の間で繰り広げられる駆け引きが圧巻でした。

シェイクスピアや歌舞伎に造詣が深く日本で最高峰の教育機関で教育を受けながらも、女心だけは理解できないところが滑稽でもあり哀れでもあります。男女の恋愛にまつわる不思議は、如何なる書物や学校でも学ぶことができない永遠にして究極的なテーマなのかもしれません。

大切な方との関係性や他者とのコミュニケーションに思い悩んでいる人には、是非とも手に取って頂きたい本です。

桜の舞う中泣いて笑って大団円

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浅田次郎原作の『プリズンホテル〈4〉春』は、夏〈1〉から始まり、季節を巡って登場人物の複雑な人間関係や問題が解決していきます。プリズンホテルは、ヤクザの大親分がオーナーの任侠団体専門のホテルです。

オーナーの木戸仲蔵にはたった一人の肉親である甥の木戸孝之助がいますが、極道小説が売れに売れているこの作家は性格に難のある人物です。面倒を見ている女性を自分の奴隷だと言っては蹴り飛ばし、育ての母を殴るという行為に読み始めた時は驚きましたが、読み進めるうちにどっぷりとはまっていきました。

とにかくでてくる人間が濃く、来る者拒まずのプリズンホテルには幽霊まででる始末です。夏・秋・冬を経て小説家の木戸孝之助の作品が「日本文芸大賞」にノミネートされます。二つの作品がノミネートされますが、どちらの小説が選ばれるのか木戸孝之助にとって大きな存在となっている育ての養母、冨江が姿を消してしまうという話にどうケリをつけるのか最後までハラハラしながら読みました。

産みの親と育ての親とどちらも自分が存在するには大切な人たちだけれど、どっちかを選べと言われたら本当に困るような気がします。特に冨江は、集団就職で17歳の頃から孝之助の父親の工場で働きはじめました。孝之助の母が他の男と駆け落ちして出て行ってしまってからも、母親代わりのようなことをし、家の仕事もするようになります。

ついには、両親は離婚、冨江が養母となりましたが孝之助は冨江に辛く当たり続けました。ご近所からも悪く言われ、散々な人生を歩んでいるように見える冨江。孝之助や冨江だけでなく登場する人物のほとんどが、何かと影や問題を抱えてプリズンホテルにやって来ます。それでもそれぞれ、収まるべきところに収まるよう物語が進んでいきます。

人生は理不尽なことだらけで、そのなかでどう折り合いをつけていくのか読み終わってから考えてしまいました。私の勝手なイメージですが、別れと出会いが交差する桜の花が咲く季節は、喜びと寂しさと切なさがいっぺんに襲ってくるような気分になります。

多くの人の心をかき乱し、春の嵐、突風が吹き抜けた後に花びらが開き、枝の重みに耐えかねるように薄紅色の花びらが一枚一枚散っていきます。別れは寂しく出会いは喜びと痛みを伴って訪れます。親との確執が解消し、日本文芸大賞を受賞をした木戸孝之助が、重い足をゆっくりと上げて次の階段を上っていく姿には、胸が締め付けられそうになりました。

成長というのも喜ばしくも寂しい、別れと出会いなのでしょうね。どの季節から読んでも面白いですが、一巻の〈夏〉から順に読むことをお勧めします。

すべてを手にしようとあがく、したたかな悪女達の物語・暗黒街の女

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」。「ミステリーの女王」ミーガン・アボット原作の物語です。舞台は1960年代のアメリカ、正直で不器用な父親に育てられ、ビジネススクールに通っている主人公の「私」は、家と学校、そして経理として勤務している三流クラブを往復するだけの単調な毎日を過ごしていました。

若さと美しさ、そして野心だけが持っている財産という「私」の前に、マフィアの女幹部、グロリア・デントンが現れたことから、「私」は思いもよらぬ人生を歩むことになります。グロリアは美しい足と、貴婦人の如く優雅な佇まいの裏に様々な血生臭い伝説を残した裏社会の「女王」でしたが、一瞬にして「私」の中の素質を見出だし、後継者にすべく様々なことを教えます。まるで、「母」と「娘」のような二人の女の心は時に重なりあい、時にすれ違い、複雑なものになっていくのですが・・

とにかく冒頭から描写が素晴らしく、読者は一瞬にして60年代の猥雑なエネルギーに満ちた裏社会に呑み込まれていきます。優雅にして冷酷、非情にして孤独な「女王」グロリアも、フレンチツイストに結った髪型や高価で上品な服装にいたるまで丁寧に描かれ、まるで目の前にいるかのような錯覚すらおこしそうです。

そんな完璧なはずのグロリアがまるでメドゥーサの如く醜悪な非情ぶりと共に、徐々に人間臭さを披露していくのに対し、ちっぽけな小娘にしかすぎなかった「私」こそ、栄光と金に執着するしたたかなモンスターへと変貌していくのは本当にぞくぞくするほど面白い展開です。この悪女達を前にすると、どうにも男達は安っぽく無様で、小物な感じがしますが、それもこの作品をフィルムノワールのような芳醇な味わいにしているとも言えます。

この物語の主人公である「私」以上に主人公のグロリアですが、従来のキャラクターに当てはまらない彼女の個性は一際輝いており、ある種の潔さ、カッコよさまで感じられてしまうのは不思議です。

ミーガン・アボットは主に60年代を舞台に書くことが多いですが、どの作品も「女」と「女」の複雑な関係が主題になってます。グロリアは「私」に対して時には「母」のように優しく、時には「女王」のように恐ろしいですが、「私」の中に自分を見出だし、一体化を望んでいるかのような描写がちらほら見られます。げに恐ろしきは女・・そんな言葉が浮かんできそうな興味深い作品です。

私が最近読んだ小説の中でも特に印象に残っている1冊は、ジェネレーションX 加速された文化のための物語たち、になります。

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小説「ジェネレーションX 加速された文化のための物語たち」は、1991年に刊行されたダグラス・クープランドの長編デビュー作品になっております。著者自身を投影したキャラクターであるアンディの、カリフォルニア州の豊かな自然に囲まれているパームスプリングスでの穏やかな生活を描き出していました。

アパレル業界のバイヤーとして忙しいクレアは、マルタ島で何も考えずに読書にふける自分自身の姿を夢想しています。マーケティング関係の仕事で活躍を続けているダグは、都会のオフィスを子牛の肥料飼いに例えています。

ビジネスエリートたちのヒエラルキーに反旗を翻して、無機質な都会を脱出していく3人の男女が痛快でした。砂漠の中にあるバンガローで運命共同体を形成することによって、自由気ままな生活をエンジョイするのが微笑ましかったです。

空の広さを味わい風のにおいを嗅ぎ、頭の中を空っぽにしていくシーンが美しさ溢れていました。自らの過去と向き合っていくうちに、それぞれの未来への道を見出す瞬間を上手く捉えていました。「地下室族になるということは、システムからドロップアウトすることだ」というセリフが強く心の中で響きました。

空気を読みながら周りと同調することを重視する多くの人に対して、痛烈なメッセージや批判が込められていました。本書を発表したダグラス・クープランドは、一大センセーショナルを巻き起こしていきます。文学の世界にとどまることなく、幅広いジャンルのメディアからX世代の代弁者として祭り上げられていきます。

この本がきっかけになって、アメリカの1960年代から70年代にかけて生まれた世代を、「Xジェネレーション」と呼ぶようになったのは有名な話です。誰よりも孤独と自由を愛し続けてきた著者にとっては、注目を集めることは苦しかったようです。自らの世代に関するコメントを一切控えるようになった著者は、押し付けられるラベルを否定するためにひたすらに創作活動へと打ち込んでいきます。

高い教育を受けながらも将来の展望を見出せない世代の想いは、1980年代前後生まれのロストジェネレーションへと受け継がれていきます。いつの時代何処の国にも鬱屈とした想いを抱えている若者たちはいるはずなので、そんな方には是非とも手に取って頂きたい1冊です。
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まとめ

今年一冊目の本は見つかりましたか?


面白い本に出会えると、とてもテンションが上がりますよね!未読なら、おすすめ作品をぜひ読んでみてください!



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2018/01/22   2018/01/22   コメント(0)
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Tags  西尾維新 化物語 ミステリー サスペンス 面白い本
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