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未読ならもったいない!ミステリー&アウトロー小説9選

おすすめのミステリー&アウトロー小説を9作、リストアップしてみました!
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『白い巨塔』は見応えあり!

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私のおすすめの小説は山崎豊子の『白い巨塔』です。テレビドラマ化も何度かされており、10年ほど前にも唐沢寿明、江口洋介らが出演していましたね。

実を言うと、私はドラマからその小説に興味を持つようになり、普段読書とは程遠い生活を送っていたにもかかわらず、図書館で原作を手に取り、読み進めるようになりました。あらすじを簡単に説明しましょう。

大学医学部において、優れた手腕をもつ財前と里見。外科医の財前は教授へと出世するために日々政治的な努力をする一方、内科医の里見は患者のことを第一に考え、学内の政治には興味がなさそうです。

対照的な2人ではあるが、ともに切磋琢磨して医師として技術を磨くのであるが……。財前は師である東教授らを尻目に権謀術数を重ねて教授選へと打って出るのです。ここまでを見ると、医学あるいは病院を舞台とする小説ではありながら、一種の政治小説に近いと思います。人間の欲望渦巻く様子が重厚に描かれており、読み手を引きつけます。

見事財前は教授となりますが、これだけだと、主人公が出世して、栄華を極めて、大団円といきたいところなのですがね。ところが、財前が診察した患者が亡くなり、話は急展開します。どうやら、患者の死亡の原因に、財前の医療ミスがあるというのです。

主人公に突如襲いかかる試練、と言えば聞こえがいいのですが……。今から確か40年ほど前の作品だったと思いますが、今もこの当時も、考えることは同じかなと思ってしまいました。21世紀の時代にこれが起これば、確実にマスコミに嗅ぎつかれて、パワハラ・アカハラ・社内いじめのようにして扱われるのではないでしょうか。この部分に関しては、ぜひ作品を手にとって読んでみてほしいと思います。

さて、医療ミスの有無とその責任を問われている中で、次第に魔の手が忍び寄って来ます。それは医者としては、とても辛く、そして悔しかったろうと思います。やがて、財前はその魔の手によって、命を落とすこととなります。

これは原作では非常に重々しく、厳粛に描かれており、最後は財前の遺言状をもって締めくくられています。この遺言状が、また素晴らしい。たぶん相当の覚悟を持って、さまざまな思いを抱きながら、生涯最後の筆をとったのではないでしょうか。

この場面はドラマでもしっかり描かれており、30年ほど前のドラマで財前役を演じていた田宮五郎は、減量をして、財前の最期を見事に演じ切ったと言われています。ドラマからこの作品に入り込むと、大まかなストーリーは想像できるのですが、それ以上に原作は重厚かつ厳粛で、社会問題にも切り込み、その一方で登場人物の背景・内面・人間関係を事細かに織り成されており、私はどんどん引き込まれていきました。

この文章だけでは語りつくせないのが、この作品です。山崎豊子さんの作品は、名作揃いでドラマ化もされているものばかりですが、ぜひ『白い巨塔』は読んでみてほしいと思います。本当に、一読の価値ありです!
おすすめ度:

今村昌弘『屍人荘の殺人』がお薦め

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私がお薦めするこの作品は、新本格30周年(新本格ミステリの原点、綾辻行人『十角館の殺人』の刊行から30年目)の2017年に刊行された第27回鮎川哲也賞受賞作品です。神紅大学のミステリ愛好会の葉村譲と会長の明智恭介が、映画研究部の夏合宿に参加するため、同じ大学の探偵少女、剣崎比留子と共にペンション紫湛荘を訪ね、そこで殺人事件が発生するというのが大まかなあらすじです。なんといっても最も私が惹かれたのは、「隔絶された館(クローズド・サークル)で起こる連続殺人」という新本格ミステリの初期を思わせるシチュエーション。さらにそのクローズド・サークルを形成しているのが、バイオハザードを思わせるゾンビに周囲を取り囲まれた空間という、スリラーと本格ミステリの葉面の面白さを持っていた所です。本格ミステリに馴染みのない方にはスリラーとして、またその愛好者には特殊なクローズド・サークルものとして楽しめる作品であると思います。特殊なシチュエーションで起こる作中の事件、解決に至る論理も「その状況だからこそ起こり得た真相」となっており、単なる奇抜な設定で終わっていないところも良かったです。

解決編も、可能性を一つずつ除去していって容疑者を絞っていくロジックが爽快でした。また、登場人物も個性的で、葉村・明智・比留子の3人が主に推理を進めていくのですが、彼らの丁々発止の推理合戦が小気味よく描写されていて、なにかと単調になりがちな推理・検証パートも飽きずに読み進めることができました。

そして、比留子の「事件に巻き込まれやすい体質から自らを守るために名探偵として振る舞う」という在り方が明かされる場面は、「名探偵」というキャラクター性について考えさせられました。名探偵を「事件を解き明かすヒーロー」とするか「謎の解答を読者に示す舞台装置」としてみるかによって印象は変わって来そうですが、彼女の在り方に、彼女が背負う業に非常に惹かれました。

また、本書のミステリ部分以外で面白かったところといえば、冒頭の学食で葉村と明智の2人が、「注文したメニューをその人の服装などから推測して当てる勝負」です。これは文字通り2人がああでもないこうでもないと議論しながら推理してメニューを当てようとします。

結果的にどちらの予想も外れてしまうのですが、そういったリアルな結果を本格ミステリの冒頭で描写してしまうのが可笑しかったです。本格ミステリ、ホラー、あるいは青春小説が好きな方には特にお薦めしたい作品です。

美しい文章で綴られる、切なく優しい物語 わくらば日記

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今回紹介させていただくの小説は「わくらば日記」(角川文庫)です。著者は『花まんま』で直木賞を受賞した朱川湊人。この方の描く小説は、とても文章が美しいと有名ですが、今回紹介するこの物語においてもそれは健在です。

舞台は昭和30年代。心優しく繊細な姉・「姉様」こと「鈴音」と、活発で少しミーハーな妹・「ワッコちゃん」こと「和歌子」を描いた物語。その物語は、主人公である和歌子の回想という形で進んでいきます。姉である鈴音は、巷では美人で有名。しかしながら、体はとても弱く、医者には中学まで生きていられるかわからない、とまで言われてしまう程。

そんな姉には人や物に宿る記憶を映像として読み取る不思議な能力があり、その不思議な能力で難しい事件を解決することがあったが…という内容となっています。不思議な能力で事件を解決するというと、サイコメトリーものやホラーなのかと思われてしまいそうですが、そうでありません。どちらかというと、その能力を通じて見える、登場人物たちの心のありかたを描いた小説です。

派手なアクションシーンもありません。派手なシーンがない分、切ない場面や優しい場面が多いのがこの小説の特徴です。能力を用いて事件を解決するだけの物語ではなく、能力によって見えてくる犯人や被害者の悲しみ・背景。

そして、それを見た姉妹がどう動くのか、という部分が物語の主軸になっていると言えます。また、本書の中で起きる事件も、ただ殺人や窃盗だけというわけでもありません。中には鈴音の淡い初恋を描いた物語も含まれています。

和歌子の視点から覗いた、姉の初恋はとても美しく、そして切ないものです。しかし、他の事件同様、ただ切ないだけではなく、読んでいると心が温まります。この小説はは全体を通して「です・ます」調で進みます。「貧しくても品よく」という教育を受けた主人公の回想という形をとっていますので、とても読みやすくて綺麗です。

まるで、祖母の昔話を聞いているような感覚に陥ります。また、時代設定が昭和30年代となっている為、物語は最初から最後まで、懐古的かつ心優しい雰囲気に包まれています。登場人物たちの様子も生き生きと描かれていますので、例え当時の様子をしらない方でも、容易にその風景を思描けるのではないでしょうか。少し心が疲れ気味の方。普通のミステリーやサスペンス小説に飽きてしまった方。レトロな雰囲気を味わってみたい方。是非この物語を読んで癒されてください。

コンビニ人間の紹介

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梅田 蔦屋書店 ヤフー店 Yahoo!

私が今回するのは村田沙耶香著、「コンビニ人間」です。作者がコンビニで働いているだけあってコンビニの描写は非常に細かく書かれていてコンビニで働いていた人、働いていない人でも情景がはっきりと浮かびます。

主人公は30代半ばの女性古倉恵子。彼女はコンビニ店員として大学時代からアルバイトで入りそのままずっと働いています。恵子は小さい頃から変わり者で、死んだ鳥を見て「お父さんが焼き鳥が好きだから焼き鳥にして食べよう」と言ったりするような子供でした。

自分のおかしな所がどうやったら治るのかをずっと考えていた恵子。そんな時転機が訪れます。恵子は大学時代にコンビニでアルバイトを始めたことをきっかけに周りの人たちの所作やファッションを研究し普通の人間になろうと努力します。

コンビニはマニュアルがあり同じ制服を着てマニュアル通りに仕事をこなす。やっとみんなと同じ人間になれたのだと安心してます。こうしてコンビニは恵子の居場所、唯一人間でいられる場所になりました。

恵子の観察力はとてもずば抜けていてそれはコンビニの仕事にもいかされています。コンビの仕事が心地よく感じていた恵子ですが周りはなぜ彼女がコンビニで働き続けるのか内心違和感を覚えていたようです。病気だからと誤魔化し働く恵子。そんな中、白羽という35歳の男性が婚活目的でアルバイトとして入ってきます。彼はプライドが高い人間で周りを見下したり仕事も真面目に行わない人間でした。

白羽は女性客につきまとい行為を行い仕事を解雇されます。その後偶然白羽と再開する恵子ですが白羽がこんなことをいいます。「現代は縄文時代から何も変わっていない。狩りをしない男や子供を産まない女。ムラには必要ない人間は削除されていく。古倉さんは恥ずかしくないんですか。結婚もせずうろうろしている。

縄文時代だったらお荷物ですよ。僕は男だから盛り返せるが、古倉さんは女だからどうしようもないです」と言われます。白羽によるとネット企業で成功すれば女が寄ってくるといいます。恵子はここで自分は異質な存在だったのだということに気付きます。ひょんなことから白羽と同棲することになります。

実家に帰った恵子は男性と付き合っていると妹に打ち明けます。妹は大喜びです。恵子は友達にも付き合っている男性の存在を明かしやはりこちらも大喜び。人間の枠からはみ出ていた恵子は男性と付き合っていると主張することで同じ人間であろうとしたのです。病的にも周りと同じでなければいけないと思う主人公。コンビニで働き続けたその先に何が待っているのか。普通とは何なのかを問われる作品です。

私が最近読んだ中でも特に印象に残っている1冊は、雀鬼五十番勝負、になります

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小説「雀鬼五十番勝負」は、1980年の11月30日に阿佐田哲也のペンネームで角川書店から刊行されたギャンブル小説集になっております。

小説家として色川武大の名義で活躍し続けてきた著者の、若き日の博打打ちとしての想いや記憶が映し出されている作品です。第二次世界大戦終結直後の焼け野原となってしまった東京の下町が主な舞台になっていて、闇市が立ち並び愚連隊や浮浪者が徘徊する胡散臭いムードがありました。得たいの知れない麻雀打ちが数多く徘徊している中で、次々と現れる強敵たちをなぎ倒していく主人公の戦いの日々が痛快です。

将棋のように一戦一戦棋面を付けている訳でもないのに、あらゆる局面での勝負の駆け引きを覚えている著者の記憶力には驚かされました。1945年の敗戦直後から1952年の3月まで6年間に渡って、麻雀に打ち込んだ過去が鮮やかによみがえっていきます。

年齢でいうと16才から23才までの多くの人が青春時代を謳歌している時期に、貴重な時間とエネルギーををすべて場末の麻雀クラブに注ぎ込んでいく姿には鬼気迫るものがありました。

体力と神経を激しく磨り減らしながら、どや街で泥のように眠りこける日々の生活が映し出されていきます。世間一般の人たちからは軽蔑され、警察や地元の反社会的勢力の構成員からは追い回されていく様子には胸が痛みました。

ひたすらに麻雀を打つ真剣な表情には、ギャンブルに溺れていく怠惰なイメージは決して感じることはないです。むしろ自分自身を苦行に追い込むことに徹する修行僧のような、ストイックな感情や雰囲気までもが漂っていました。

サラリーマンが机に向かって仕事をしているような、ある種の義務感まで伝わってくるのが不思議でした。全編を通して溢れている数多くの魅力のあるセリフの中でも、「やっぱり麻雀の神様も、弱くなっているんだな。」という言葉には忘れがたいものがありました。

プロ野球のスーパースターがユニフォームを脱ぎボクシングのチャンピオンがリングを去るように、「坊や哲」の異名を持ち恐れられてきた雀鬼にも引退の時が訪れることになります。自らの過去の思い出ときっぱり決別することによって、新たな人生を歩んでいく瞬間には胸を打たれました。 麻雀に興味のある方だけではなく、ありとあらゆる勝負の世界に生きている多くの人にも手に取って頂きたいです。

私が最近読んだ小説の中でも特に印象に残っている1冊は、結晶星団、になります

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「結晶星団」は、1973年の11月30日に刊行された小松左京による18冊目のSF短編集になります。ひとつの事件の謎を4人の男女の意識の流れから解き明していく「HAPPY BIRTHDAY」と名付けられた短編小説から、本作品は始まっていきます。

同じ出来事でも年齢や性別によってまるっきり違った捉え方をしていき,予想外の悲劇へと繋がっていくクライマックスシーンには驚かされました。「失われた結末」では,創作活動に行き詰まった作家が巻き起こす騒動が映し出されていきます。

著者自身を投影したかのような主人公の冴えない作家のキャラクターがユーモアセンスたっぷりとしていて、SFの王道ともいえるタイムスリップや身体の入れ替わりを駆使したエンターテイメントが良かったです。表題作「結晶星団」では、宇宙空間に浮かび上がる巨大な奇跡が映し出されていきます。

無限の闇のなかで、14個の恒星がクリスタルの陣形に並び輝くシーンが美しさ溢れていました。タブーとされる天空の水晶体に、全宇宙の知的生命体の命運をかけて突入していく主人公の姿には胸を打たれました。道中に散りばめられている数多くのエピソードやハプニングからは、まだ見ぬ世界への恐怖や不安感が沸いていきます。

それ以上に命の探求者としてのエネルギーと好奇心に満ち溢れている若者たちには心温まるものがありました。古今東西のSF作家たちが時空を越えて大暴れを繰り広げる、「タイム・ジャック」が圧巻でした。星新一や筒井康隆を始めとする、実在の小説家をデフォルメしたキャラクターたちがユーモアセンスたっぷりとしています。

今読み返してみると、登場する作家の半分以上が鬼籍に入ってしまったことには一抹の寂しいものがあります。SFが日本の文壇の中で文学としての地位を得るために、同じ時代を戦い抜いた仲間へのレクイエムが込められていました。

全編を通した中でも1番に心に響いたセリフは、「「過去」はもはや傷つく事はない」という言葉でした。未来への過剰な希望や淡い幻想を戒めるとともに、自らの歩んできた人生に向かい合おうとする強い意志が伝わっていく言葉でした。昭和の時代に発表された短編集になりますが、色褪せることのない魅力があります。

むしろ時代の流れのほうが、著者の鋭い感覚に追い付いてきたのかもしれません。未来の世界を描き出していきながら、ひとりひとりの生きた人間を上手く捉えているところが良かったです。ありふれた日常生活や毎日の繰り返しに退屈している方には、是非とも手に取って頂きたい小説です。

私が最近読んだ小説の中でも特に印象に残っている1冊は、彼女は鏡の中を覗き込む、になります

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小説「彼女は鏡の中を覗きこむ」は、2017年の4月5日に刊行された小林エリカによる4つの作品が収められている第1短編集になっております。原子力の発達と共に人生を歩んできたひとりの女性の生きざまが映し出されている「SUNRISE日出ずる」から幕を開けていきます。

グレン・ミラー・オーケストラの名曲と、世界で初めて現場が製造された場所であるトリニティサイトとの関係性にスポットライトを当てているところが面白かったです。著者自身の結婚や妊娠といったセンセーショナルな体験を、さらりとしたタッチで描き出しているところにも共感出来ました。

「宝石」では,ひと粒の光る石を巡って時空を超え繋がっていく女性の生きざまが心に残りました。単なるアクセサリーやファッションとしてではなく、人間の心の中の想いや記憶が実体化した存在として宝石を捉えているところに鋭い感受性がありました。

第二次世界大戦下での金沢で原爆製造にのめり込んでいき戦後は人工宝石の開発に着手した、理学博士である飯盛里安の数奇な運命に登場キャラクターたちの人生を絡め合わせていくスタイルが斬新でした。「シー」では、一定時間服用した人間の視力を奪う新薬が開発された、奇妙な世界が映し出されていきます。

小林エリカの作品の中では異色なSFタッチのストーリーになり、新たな可能性と才能にチャレンジしていることが伝わってきました。日常的に目に見えるものに捉われすぎていること考えさせられるとともに、目に見えない存在を描き出す著者の豊かな想像力には胸を打たれました。

本作品を締めくくる「燃える本の話」は、世界中の木々や植物が消失して書物のなくなった近未来が舞台に設定されています。残されている「ノルウェイの森」を奪い合う人たちの姿からは、何処までも純真無垢な読書への喜びを感じました。

全編を通して散りばめられているテーマである、科学の暴走と原子力の脅威について考えさせられました。周りの人たちの幸せのために研究を続けてきた科学者が、ある一線を超えた途端に歯止めがかからなくなってしまう様子がリアリティー溢れていました。

3・11後のこの世界の混迷に鋭いメッセージや批判を込めつつ、これからの世界のあり方について想いを巡らせていました。自らのルーツを探りつつ過去の記憶と向かい合っていくことによって、未来を見つめている著者小林エリカの姿が思い浮かんできました。

司馬遼太郎の代表作、「燃えよ剣」が私のオススメの小説

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司馬遼太郎、と聞けば大抵の人がご存知なのではないでしょうか?そんな司馬遼太郎の代表作、「燃えよ剣」が私のオススメの小説です。

司馬遼太郎の小説といえば、「竜馬がゆく」の様に何巻もシリーズで続いて初心者には読みにくいというイメージがもしかしたら持っていらっしゃる方もいるかもしれません。ところがこの「燃えよ剣」は上下巻の二冊のみで読みやすく、司馬遼太郎に初めて挑戦する方にもおススメです。内容も皆さんご存知新撰組副長、土方歳三の生涯を描いたもの。

あまり歴史が詳しくない方にこそこの本を読んでほしいと思います。私はこの本を読んで新撰組ファンになりました。司馬遼太郎作品の最大の魅力は史実とフィクションが絶妙なバランスで混ぜ込まれ物語が作り上げられていること。

この「燃えよ剣」も例外ではありません。例えば、土方歳三の佩刀は史実では十二代目和泉守兼定ですが、作中では兼定史上最も評価の高い二代目兼定、通称「ノサダ」に変えられています。歴史オタクの人には一見違和感を覚えるかもしれません。

しかしこの変更点は作中で「武士として名をあげるため、名刀と言われる刀でないとダメだ」という土方歳三の強い想いから「ノサダ」を求めた、とされており、私は全く違和感を感じませんでした。まずは読んで大体の歴史をつかんだ上で、史実を学んでからもう一度読み直すことで「これフィクションだったんだ!」ということがわかってとても楽しいです。

何度も何度も繰り返し読むことができるのも司馬遼太郎作品の魅力といえるでしょう。史実に詳しくなっていくと、まだ何者でもなかった日野時代、京に渡って壬生浪士組として活躍した時代、池田屋事件で名をあげた時代、そして大政奉還が行われ、戊辰戦争でバラバラになっていくかつての仲間たち、まるでリアルにその流れを見守っているかの様な臨場感を味わうことができます。

登場人物たちに思い入れができてくると、一人一人の仲間との別れには涙なしには読めなくなっていきます。特に、天然理心流の道場時代からの仲間であった沖田総司、そして近藤勇との永遠の別れは何度読んでも泣けてきます。

そして一人になってしまった土方歳三。たとえ仲間がいなくなったとしても、己の信念に従い、生き様を貫く様子は心を打たれ、学び取るところが多々あります。普段歴史小説を読まない初心者の方から、歴史大好きな方まで老若男女問わず一度は読んでほしい作品、それがこの「燃えよ剣」です。

私が最近読んだ小説の中でも特に印象に残っている1冊は、重力の都、になります

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小説「重力の都」は、1988年に中上健次によって新潮社から刊行された10冊目の短編集になっております。6編のばらばらに見えていた収録作品の間に、時折り奇妙な繋がりが生まれていく構成が斬新でした。

全編を通して、著者が愛して止まない耽美派の小説家である谷崎潤一郎への敬意が込められています。反社会的勢力から逃げ出しながらも全うな生き方の出来ない男を描き出している「刺青の蓮花」や、幼い姉弟と無骨な男のいびつな人間模様をテーマにした「ふたかみ」も良かったです。

小栗判官や信徳丸を始めとする、古典文学への造詣の深さが伝わってきました。猥雑なセリフや肉体的な欲望にとらわれている人々もどこか憎めないものがあり、不思議な愛着が沸いていきます。

山奥でトンネル開通工事やダム建設などの肉体労働に明け暮れる男性と行きずりの女性の奇妙な関係性が映し出される表題作「重力の都」は圧巻でした。ふもとの町のあばら家でたったひとりで暮らしている女との、その場限りの情事に溺れていく主人公由明の姿には忘れがたいものがありました。

この本のタイトルにつけられている、「重力」の意味について考えさせられました。見知らぬ男女が互いに引き寄せられていくように、ひとつの物語の世界の中に数多くのキャラクターたちが取り込まれていく様子が思い浮かんできました。

ストーリーの舞台になっている、材木伐採や土木工事で栄えてきた地方の街並みが味わい深いものがありました。昔懐かしい家屋が次々と取り壊されていく中でも、ヒロインの住む家だけは忘れ去られたかのような佇まいを見せているのが心に残りました。

著者が生まれ育った和歌山県新宮市との、不思議な共通点も感じることができます。自らの故郷への愛憎半ばする複雑な気持ちが、破滅的な道のりを歩んでいくふたりの姿に重なり合っていきます。

物心ついたころから日雇いの仕事に明け暮れてきた由明の生きざまには、羽田空港内でフォークリフトを動かしつつ昼休みに密かに執筆活動を続けていく若き日の中上健次が思い浮かんできました。

経済的な発展による恩恵からこぼれ落ちてしまった者たちへの、優しい眼差しには心温まるものがありました。1冊の本が完成するまでには作家や編集者の努力だけではなく、印刷から造本を経て運送・流通へたどり着く目に見えない人たちの力にかかっていることを知っているからなのかもしれません。

働くことに対して違和感を抱いている若い世代の方には、是非とも手に取って頂きたいと思います。
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まとめ

知らない世界を感じる!


特にアウトロー小説は一般人が経験できない世界を感じることができるので、世界が広がった気がしますね!



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2018/02/25   2018/02/25   コメント(0)
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Tags  重力の都 燃えよ剣 彼女は鏡の中を覗き込む 結晶星団 わくらば日記 朱川湊人 司馬遼太郎
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